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「ヴェーターラ・パンチャヴィンシャティカー」の版間の差分

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'''ヴェーターラ・パンチャヴィンシャティカー'''({{lang-sa-short|vetālapañcaviṃśatikā}})は、[[インド]]の[[説話集]]。[[日本]]では『屍鬼二十五話』として知られる。現存しない幻の大説話集『[[ブリハット・カター]]』を、詩人[[ソーマデーヴァ]]が簡略化した伝本『[[カター・サリット・サーガラ]]』の第12巻を1つの本としたもの。
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'''ヴェーターラ・パンチャヴィンシャティカー'''('''Vetalapancavimsatika''')は、[[インド]]の[[説話集]]。[[日本]]では『屍鬼二十五話』として知られる。現存しない幻の大説話集『[[ブリハット・カター]]』を、詩人[[ソーマデーヴァ]]が簡略化した伝本『[[カター・サリット・サーガラ]]』の第12巻を1つの本としたもの。


== 概要 ==
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== 影響 ==
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サンスクリット語の他に多数の伝本があり、チベット語やモンゴル語の伝本も存在する。近代インドの各言語にも翻訳されている。「すげかえられた首」の物語は、[[ゲーテ]][[トーマス・マン]]によって作品化もされ
サンスクリット語の他に多数の伝本があり、チベット語(『屍鬼故事』)やモンゴル語(『シッディ・クール』)の伝本も存在する。近代インドの各言語にも翻訳されている(ヒンドゥー語『バイタール・パチーシー』)圏で『僵屍鬼故事』とも表記され


西洋の文化圏にも影響を与えており、『[[デカメロン]]』などの説話に類型のものが見られる。「すげかえられた首」の物語が[[ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ|ゲーテ]]の『パリア』、[[トーマス・マン]]の『すげかえられた首』といった作品の題材としても採られているほか、[[小泉八雲]]も本書を紹介している。
== 訳 ==

* ソーマデーヴァ『屍鬼二十五話 インド伝奇集』[[上村勝彦]]訳。〈[[東洋文庫 (平凡社)|東洋文庫]]〉323、1978年。
== 訳 ==
* ソーマデーヴァ『屍鬼二十五話 インド伝奇集』[[上村勝彦]]訳[[東洋文庫 (平凡社)|平凡社〈東洋文庫]] 1978年。
* 『呪術の王国 憑鬼25話』[[泉芳璟]]訳、<ref>初刊訳は1920年代。この版は改訂復刊</ref>北宋社 1991年。
* 『蒙古シッディ・クール物語』吉原公平訳、ぐろりあ・そさえて 1941年。
* 『シッディ・クール<ref>インド文学者・[[田中於菟弥]]などは「'''シッディ・キュル'''」という表記も使用している。</ref> モンゴル説話集』西脇隆夫 編集 [[名古屋学院大学]]総合研究所研究叢書 2013年。

== 脚注 ==
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== 参考文献 ==
* 田中於菟弥「屍鬼二十五話」解題 『東洋の奇書55冊』自由国民社 1980年 153頁


== 関連項目 ==
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[[Category:インドの書籍]]
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[[Category:サンスクリット語文学]]
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[[Category:説話集]]
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[[en:Baital Pachisi]]
[[fr:Les Contes du vampire]]
[[gu:વેતાલ પચ્ચીસી]]
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[[pa:ਬੈਤਾਲ ਪਚੀਸੀ]]
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2024年6月30日 (日) 03:33時点における最新版

ヴェーターラ・パンチャヴィンシャティカー(: vetālapañcaviṃśatikā)は、インド説話集日本では『屍鬼二十五話』として知られる。現存しない幻の大説話集『ブリハット・カター』を、詩人ソーマデーヴァが簡略化した伝本『カター・サリット・サーガラ』の第12巻を1つの本としたもの。

概要

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死体に取りついたヴェーターラがトリヴィクラマセーナ王に聞かせる25の不思議な物語から成り、各話の最後にヴェーターラが問答を仕掛け、トリヴィクラマセーナ王がそれに見事に答えるという形式を持つ。最後に王はシヴァ神に認められ、ヴィディヤーダラ族の転輪聖王とされた。以下の25話で構成される。

  • 第1話「烙印をおされた少女」
  • 第2話「娘一人に婿三人 彼女の灰を抱いていた男」
  • 第3話「男が悪いか女が悪いか」
  • 第4話「息子を犠牲にした忠臣」
  • 第5話「娘一人に婿三人 ソーマプラバーの場合」
  • 第6話「すげかえられた首」
  • 第7話「海中都市(1)」
  • 第8話「デリケートな兄弟」
  • 第9話「王女と四人の求婚者」
  • 第10話「三人の男と約束した女」
  • 第11話「デリケートな王妃たち」
  • 第12話「海中都市(2)」
  • 第13話「バラモンを殺したのは誰か」
  • 第14話「盗賊を愛した少女」
  • 第15話「ムーラデーヴァと性転換の秘薬」
  • 第16話「ジームータヴァーハナの捨身」
  • 第17話「侮辱された女の復讐」
  • 第18話「呪法に失敗した師弟」
  • 第19話「三人の父親を持った王」
  • 第20話「生贄の少年はなぜ笑ったか」
  • 第21話「焦がれ死にした女」
  • 第22話「ライオンを再生した兄弟」
  • 第23話「青年の死体にのりうつった行者」
  • 第24話「父が娘を、息子が母を妻にした場合」
  • 第25話「大団円」

影響

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サンスクリット語の他に多数の伝本があり、チベット語(『屍鬼故事』)やモンゴル語(『シッディ・クール』)の伝本も存在する。近代インドの各言語にも翻訳されている(ヒンドゥー語『バイタール・パチーシー』)。漢語圏では『僵屍鬼故事』とも表記される。

西洋の文化圏にも影響を与えており、『デカメロン』などの説話に類型のものが見られる。「すげかえられた首」の物語がゲーテの『パリア』、トーマス・マンの『すげかえられた首』といった作品の題材としても採られているほか、小泉八雲も本書を紹介している。

訳書

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  • ソーマデーヴァ『屍鬼二十五話 インド伝奇集』上村勝彦訳、平凡社〈東洋文庫〉 1978年。
  • 『呪術の王国 憑鬼25話』泉芳璟訳、[1]北宋社 1991年。
  • 『蒙古シッディ・クール物語』吉原公平訳、ぐろりあ・そさえて 1941年。
  • 『シッディ・クール[2] モンゴル説話集』西脇隆夫 編集 名古屋学院大学総合研究所研究叢書 2013年。

脚注

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  1. ^ 初刊訳は1920年代。この版は改訂復刊
  2. ^ インド文学者・田中於菟弥などは「シッディ・キュル」という表記も使用している。

参考文献

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  • 田中於菟弥「屍鬼二十五話」解題 『東洋の奇書55冊』自由国民社 1980年 153頁

関連項目

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