スタンディングデスクには健康上の利点がある。それでも、運動は欠かせない

長時間の座りっぱなしは不健康であるという理由から、スタンディングデスクの導入が始まった。しかし、その効果をはっきりと裏付ける研究は多くなかった。最近発表された2つの研究で、立位作業の利点とリスクが明らかになってきた。
スタンディングデスクには健康上の利点がある。それでも、運動は欠かせない
Photograph: Getty

運動不足は間違いなく体に悪い。長時間の座りっぱなしは、心血管疾患や死亡リスクを高めると言われてきた。そのような恐ろしい結末を回避するには、座らないで動くことが大切だ。ほんの少しの時間でも運動すれば効果があることが、さまざまな研究で指摘されている。

とはいえ、いまの時代、座らずに生活するのは難しい。特にオフィスでは無理だろう。そのため、最近人気のスタンディングデスクをはじめとして、立ったまま過ごせるような仕掛けが次々と登場している。デスクに縛られてしまうのであれば、せめて立ち姿勢のままで作業できるようにしようという考え方だ。

しかし、スタンディングデスクの有効性に関する研究は少なく、結論が導き出せていないケースもある。さらに、長時間の立位には特有のリスクがあり、仕事関連の座位に関するデータも一定していない。スタンディングデスクの最終的な評価はまだ明確でないものの、今年発表された2つの研究は、立位での作業における潜在的な利点とリスクについて、これまでで最も詳細な根拠を示している。

これまでの研究結果

長年にわたる研究では、スタンディングデスクを使用することで、心臓血管や代謝に関する健康指標が改善されることが指摘されてきた。この指標とは、脂質レベル、インスリン抵抗性、血流依存性血管拡張(FMD)などの測定値だ。しかし、心臓発作などの健康被害を回避するために、これらの指標の改善がどれだけ重要かは不明だ。そのメリットはわずかなものかもしれないと、2018年に発表された分析では指摘されている。

また、スタンディングデスクについては懐疑的な見方をする理由も十分にある。まず、立っていることは座っていることと同じで、体を動かさない。動きの欠如や運動不足が根本的な問題だとすれば、ただ立っているだけでは解決しない。

座ることと立つことは「静止」というひとつのカテゴリーにまとめられるとも言える。しかし、一部の研究者は、座る行為すべてが同じではないと主張している。『Journal of Occupational and Environmental Medicine』に2018年に掲載された見解によると、健康に関してふたりの専門家が次のポイントを主張した。不健康であることと、座ることとの関連性は、調査対象となる集団によって違う。そして、例えば『カウチポテト効果』呼ばれる、自宅での座位時間が及ぼす特有の影響なども、考えなければならない。

この研究者たちは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の名誉教授デイビッド・レンペルと、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の名誉教授ニクラス・クラウスである。彼らは論文中で、仕事中の座位時間と健康状態の悪化に関する複数の研究を検討しているが、それらの研究結果は一貫していない。

例えば、13年の分析では、職場での座位時間と心血管疾患との関連は確認されなかった。死亡率との関連は女性のみで示唆された。また、15年の研究では、日本人労働者約36,500人を平均10年間追跡調査している。この研究では、会社員、専門職、自営業者の死亡率と座位時間との関連は見られなかったが、農林漁業従事者では関連が確認された。

それでも最近の研究では、多少の不明点はあるものの、座る場所のいかんを問わず、長時間の座位行動と健康状態の悪化の関連性が指摘され続けている。特に心血管系疾患を引き起こす可能性が明らかにされている。そのため、休憩を取って頻繁に体を動かせる環境にないオフィスでは、スタンディングデスクへの関心が高まっている。それだけに、研究者たちはスタンディングデスクに利点があるかどうかの答えを出そうと躍起になっている。

立位作業の効果

『International Journal of Epidemiology』に先月発表された研究論文では、スタンディングデスクが心血管系の健康リスクとどのように関係するかについて、より明確な見解を示している。オーストラリアのシドニー大学のマシュー・アーマディが率いる国際研究チームは、スタンディングデスクは心臓の健康を改善しないが、座位デスクとは異なり、有害な影響も与えないと結論づけた。

この研究のために、研究者らは英国の8万3,000人強の健康データを、平均約7年間にわたり追跡した。調査期間中、参加者は少なくとも4日間、手首に加速度センサーを装着し、起きている間の座位時間、立位時間、歩行時間、走行時間を測定した。この調査結果のデータをもとに、研究者らは、座位時間、立位時間、静止時間(座位と立位の合計)を、研究対象者の医療記録の健康状態と関連付けた。

健康状態のなかでも、研究者らはふたつのカテゴリーに着目した。ひとつ目は、冠動脈性心臓病、心不全、脳卒中などの心血管系疾患である。ふたつ目は、起立性低血圧や静脈瘤、慢性静脈不全、静脈性潰瘍などの起立性循環器疾患である。このふたつ目のカテゴリーが問題視される理由は、長時間の着席と起立が、循環器疾患発症のリスク要因となる可能性があるためだ。

研究者らは、1日の総静止時間が12時間を超えると、起立性循環器疾患のリスクは1時間増えるごとに22%増加し、心血管疾患のリスクは1時間ごとに13%増加することを突きとめた。

座っているだけでも、10時間以降は1時間ごとにリスクが増加した。起立性循環器疾患では、座位が10時間続いた後は、1時間ごとにリスクは26%上昇し、心血管系疾患のリスクは15%増加した。しかし、立っていれば起立性循環器疾患のリスクはわずか2時間で上昇し、それ以降のリスクは30分ごとに11%増加した。しかし、どの時点でも立位が心血管疾患に影響を与えることはなかった。

「座位時間とは異なり、立っている場合は時間が長くても、心血管系疾患(CVD)リスクが上昇することはなかった。全体的に、立っている時間の長短は関係なく、CVDリスクの上昇または低下との関連性は認められなかった」と著者らは論文に記している。

一方、座っている時間を10時間未満、立っている時間を2時間未満に保つことは、起立性循環器疾患との関連性では、若干の予防効果が記録された。1日に9時間座って、1.5時間立っていた場合(つまり合計11.5時間の静止時間)では、起立性循環系疾患のリスクは、数%ポイント低下することが明らかになった。

データから分かることは、1日の総静止時間(座位と立位の合計)を12時間未満に抑え、適度な立位時間を取り入れて座位時間を10時間未満に維持すれば、心血管系および起立性循環器疾患のリスク増加を防げるということだ。

余暇の運動はプラス

これは、オフィスで長時間労働する際の健康リスクを軽減するための法則としては、非常に詳細な指針ではある。しかし、絶対的なものだろうか?おそらく違うだろう。これはひとつの調査結果に過ぎないため、別の調査対象者(集団)で再現する必要がある。またこの研究では、スタンディングデスクの具体的な使用方法はおろか、立ったり座ったりする時間が、仕事でのことなのか、余暇でのことなのかの違いも調べていない。また、座位時間、立位時間、静止時間を、わずか4日間の活動モニタリングに基づいて推定している。つまり、(4日間から導き出した)推定値が、約7年の平均追跡期間を通して一貫しているとは限らない。

それでも、この研究結果は、1月にオープンアクセスの医療ジャーナル『JAMA Network Open』に発表された論文の内容とおおむね一致している。この論文では、仕事中の座位時間や余暇の身体活動と、死亡率の関連性を調べている。死亡率については、全死因死亡(あらゆる原因による死亡)と、心血管疾患に限った死亡の両方の結果を掲載している。調査は、台湾の48万人以上の労働者を対象に、平均13年間ほど追跡している。

仕事中ほとんど座っていると答えた労働者は、座っていない労働者に比べ、全死因死亡リスクが16%高く、心血管疾患による死亡リスクは34%も高かった。一方、座位と立位を交互に繰り返すと答えた労働者は、全死因死亡リスクも心血管疾患死亡リスクも増加しなかった。この結果は、健康要因を調整し、性別、年齢、喫煙者、非喫煙者、慢性疾患患者など、属性別に分析しても、変わらなかった。

とはいえ、仕事中ほとんど座っている人でも、余暇時間に非常に活動的であれば、死亡リスクを相殺できる可能性があることも明らかになった。例えば最も高い余暇活動レベルを記録した人は、仕事中ほとんど座っていても、立ったり座ったりを繰り返した人や、仕事中座っていなかった人と同程度の全死因死亡リスク(原因を問わず、すべての死亡を含む死亡率)が示された。

専門家からのアドバイス

データは、総静止時間を可能な限り短くし、仕事中にある程度立ったり座ったりを繰り返せば、リスクを減らせるということを示している。

そこで論文の著者らは、仕事中に休憩をとるように呼びかけている。そして立ったり、動き回ったりできる職場環境を設けることを、特に推奨している。

長時間の立位にも一定のリスクは存在するものの、スタンディングデスクの使用は長時間座位によるリスクの軽減に寄与する。ただし最も重要なのは、可能な限り運動することだ。

(Originally published on Ars Technica, translated by Miki Anzai, edited by Mamiko Nakano)

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