ビジネスの“もやもや”からたどり着く『WIRED』:SZメンバーシップ読者探訪(IBM編)

『WIRED』の人気サブスクリプションサービス「SZメンバーシップ」を法人契約する選りすぐりの企業の“なかの人”を訪ね、ビジネスやクリエイティブへの独自の活かし方を訊くシリーズ。第2回はIBMを訪ねた。
ビジネスの“もやもや”からたどり着く『WIRED』:SZメンバーシップ読者探訪(IBM編)
PHOTO: TAMEKI OSHIRO

グローバル・テクノロジーのイノベーターとして、一世紀以上にわたりビジネスソリューションの進歩を牽引してきたIBM。今回はそのなかでも、近年重視されているUI/UXのデザインとコンサルティングを手がけるチームを訪ね、普段いかにクリエイティブを刺激する情報を収集し、インサイトを得て、かつ『WIRED』の人気サブスクリプションサービス「SZメンバーシップ」を活用しているのかを、編集長の松島倫明が訊いた。

──本日は楽しみにしていました。みなさんデザイナー、あるいはコンサルタントとしてUI/UXの分野でお仕事をされていますが、先進的な技術を使いながらそれを翻訳して顧客の方々に伝えていくなかで、新しい情報やインサイト、刺激をどのように得ているのか教えてください。

山田龍平(以下、山田) ぼくはまさに『WIRED』から得ていると感じています。学生時代から読ませていただいていますが、大学はやはり閉塞的な部分もありますし、企業のなかにいてもその企業の組織的な考え方があるので、一個人として閉塞感を感じて何か“もやもや”するときがあり、その“もやもや”がぼくだけでなく、世の中の動きとしてあるかもしれないと感じたときに気づきを与えてくれる存在が『WIRED』です。

山田 龍平 | TAPPEI YAMADA
Senior UI/UX Designer。2019年日本IBM株式会社に入社。多数の大手企業における新規事業の立ち上げや業務構想から社会実装までのプロダクトデザインを担当し、現在は主にUI/UX領域、XRデジタルプロダクトやSpatial Computing領域における3Dコンテンツ制作に従事。グラフィックレコーダーとして多数のテレビ番組に出演。気候変動に対する認知変容をテーマにメディアアーティストとして活動中。WIRED CREATIVE HACK AWARD 2023ではファイナリストに選出された。


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ぼくたちのお客様は基本的に大きな会社ですが、一緒に仕事をさせていただくなかで、お客様が抱いている“もやもや”を垣間見る瞬間もあります。そんなときに「それって本当にそれでいいの?」と問いかけてくれるのが『WIRED』で、すごく感化されてきました。パンデミックの際に出された特集号「BRAVE NEW WORLD SFがプロトタイプする未来」や、当時のエディターズレターにも刺激を受けて、組織のデザイナーとしてだけでなく、いちデザイナーとして世の中に価値を提供できるのではないかと、副業として個人事業を始める後押しもしていただいたように思います。『WIRED』が毎年開催するCREATIVE HACK AWARDも、そうした“もやもや”を作品に落とし込んで発表したし、最後にもらう講評に至るまで一貫して刺激的でした。企業のなかで閉じていなくていいことに気付かせてくれるのが『WIRED』です。

永井智裕(以下、永井) 「思考は現実化する」というナポレン・ヒルの言葉があるように、SFにはあり得る未来のさまざまな世界が描かれているので、ぼくはその世界から刺激やインスピレーションを得ています。「BRAVE NEW WORLD」号はパンデミックによる緊急事態宣言のときに出された「SFプロトタイピング」特集だったと思いますが、ぼくも小説や、映画も日本のものから海外のものまでジャンルを問わずに観ます。未来を遠投するような世界から、どこまでいまの現実に落とせるかを想像するのが好きなんです。また、自分のバックグランドが建築なので、人がどう空間を体感して動いているのかを見て、例えばなぜここにスラムが発生しているのかなど、計画外なことが起きているときに興味をもちます。デザインにしても想定外の使い方をしていたら、それを見に行くのが面白くて、そういうところにインサイトが眠っていることがあります。

永井 智裕 | TOMOHIRO NAGAI
UX Designer。広告代理店、コンサルティング会社を経て現職。広告領域では大手クライアントのBtoC、BtoBデジマ領域でcojp、ブランド、プロモーションサイト、LP、メルマガ等をデザイン。前職では新規金融サービスのサービスデザイン、製造業の現場利用アプリ等をデザイン。現在も幅広い業種にてUI/UXデザインを行なう。


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──面白いですね。実は先日、最近の若い人はSFを読まないという話を聞いたばかりだったので、SF好きとは嬉しいです。韓さんはどのように刺激やインサイトを得ていますか?

韓愛利(以下、韓) わたしは『WIRED』を1997年から読んでいます。

──米国の英語版を読まれていたんですね。

 はい。『WIRED』は当時からインスピレーションを与えてくる大事な存在でしたが、日本に来て日本版の『WIRED』があることを知り、米国や西洋人の目線だけでなく、東洋人の目線からも読めることがとても嬉しかったです。

わたしの仕事はエクスペリエンス・デザインですが、『WIRED』はその対象となるパブリックの裏の、拾いきれていないユーザーの目線や、新しい思考として見落としてはいけないことを言語化してくれます。さらにさまざまな観点から議論や問いかけをしてくれるので、単純に情報をインプットするだけでなく、人間が人間らしく思考するトリガーのような雑誌だなと思っています。また、いま現在のことだけでなく、時代の変化を振り返るときなど、10年間保管していても価値を発揮するコンテンツであることも好きです。

韓 愛利 | AELI HAN
Senior Experience Consultant。韓国のデザインエージェンシーでSAMSUNGやLGなど韓国大手企業向けのデザイナーとして活動後、ドワンゴやGREEなどの日本企業でリードエンジニア・プロダクトマネージャーとして勤務。2018年日本IBM株式会社に入社。その後、多数の企業に対してモバイルアプリを軸とした開発リードやデジタル戦略の支援担当。近年Spatial Computingや生成AI(Gen AI)など最新技術を活用した新しいエクスペリエンスデザインのプロジェクトをリード。


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──『WIRED』も随分変遷がありました。東洋的な視点が日本版の特性として現れていると言ってくださるのは嬉しいです。柴田さんはいかがですか?

柴田英喜(以下、柴田) ぼくは社歴が長く、UIやUXの創成期からIBMで仕事をしているんですが、90年代にテクノロジーやデザイン、クリエイティブをかけ算したような情報はいまのようにはなかったので、すごく情報に飢えていて、情報を追いかけるように『WIRED』を読んでいました。ですからいまもこうして、若いメンバーも含め刺激をいただいていることに歴史を感じます。先程も話にありましたが、会社としても組織としても枠を超えることを大事にしているので、閉じることなく広い視野でいろいろなことに興味関心をもち、自分のクリエイティブや思考に生かしていくのに『WIRED』を活用させていただいています。

柴田 英喜 | EIKI SHIBATA
IBM Distinguished Designer。日本IBMユーザーエクスペリエンス・デザインセンターを経て現職。ユーザーエクスペリエンス・デザインの専門家として金融、保険、通信、公共、製造などのお客様の顧客体験や従業員体験のデザイン。IBMデザイン思考を活用した新規事業創出や新規サービスの創出。ユーザーにとって魅力的で使いやすアプリケーションのデザインなどを担当。2009年 HCD-Net人間中心設計専門家認定、2016年 IBM Design Thinking Leader認定。スクラムマスター認定。2019年 日本初のIBMデザインプリンシパルに認定、武蔵野美術大学非常勤講師(2012-2020年)。


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──こんなに長く読者だった方々がいて本当に嬉しいです。逆に若い世代として久保木さんはいかがでしょうか?

久保木仁美(以下、久保木) わたしは3年前に社会人になってから『WIRED』に対する見方が変わってきました。学生時代には研究室でモノづくりをし、アートやサイエンスの文脈で『WIRED』を読んでいましたが、いまは大企業の一員となり、かつ大きなお客様がいて、『WIRED』を読みながら自分の小ささや力の無さを感じたりしますが、いまの立場でできることや役割を考えるようになりました。

久保木 仁美 | KUBOKI HITOMI
2022年に入社後、モバイルアプリや、ヘッドマウントディスプレイ向けアプリデザインを担当。現在は、XRのプロダクトやSpatial Computing領域に注力し、3Dコンテンツ制作を通じてインタラクションデザインをリード。技術とデザインの融合を図り、直感的かつ没入感のあるユーザー体験の実現を目指して提案を推進。


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──久保木さんは、気になった記事としてデザインリサーチャーの水野大二郎さんの記事をあげてくださいましたね。

久保木 はい。記事では脱成長や、SDGsやリジェネラティブが問われていますが、一方でわたしは資源を使ってきた当事者をサポートする側のコンサルタントとしてどのような役割を果たせるのか、時に“もやもや”することがありました。問われていることは、外側にいる人たちや自然を取りこぼしていないか? という視点ですが、コンサルという外側の立場にいるからこそ、問いかけられることがあるのではないかと最近は考えています。

──山田さんも普段のお仕事をされつつ、それこそCREATIVE HACK AWARDでファイナリストとなった作品はまさにそのような問いかけだったかと。

山田 ぼくはSZメンバーシップの「『脱成長』は地球を救えるか?」という記事が面白かったです。ぼくたちは基本的にクライアントワークを生業としていて、お客様の事業をいかに成長させるか、いかにユーザーのコンバージョンレートを上げていくかが業務として求められます。それに対して、親しい教授から「資本主義社会の片棒を担いでどうですか?」とクリティカルなことを問われたり、斎藤幸平さんの著書にも、ブルシット・ジョブのなかにコンサルタントや広告系、クリエイターが入っている。そうすると自分たちの仕事が果たして未来にとっていいことなのか? と葛藤が生まれ、その“もやもや”をぶつけたのがあの作品でした。世界を変えていくためにブルシット・ジョブをばっさり切って、「こういう世界であるべきだよね」と言うのは簡単ですが、そのあるべき世界への移行、トランジションのためにクリエイターが何をすべきかを考えてみたかったんです。

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ぼくが着眼したのはクリエイターの力とメディアの力のふたつで、どれだけ教授が大学のなかで嘆いても、例えば女子高生たちが見向きもしないことを、「あ、確かに地球ってやばいかも」と気づかせることができるのがクリエーターだな、と。

──それがあの山火事を主題にした作品「Fragrance Media」なんですね。

山田 そうです。人間に残されている強制力のあるメディアとして、あえて嗅覚という器官を使いました。つまり視覚と聴覚によるいまのメディアの限界を書いて資料を提出したわけですが、ファイナリストに選んでくださった『WIRED』さんの寛容さ、懐の深さに驚きました。齋藤精一さんをはじめ審査員たちの前でプレゼンするような場も設けていただき感謝しています。今後もクリエーターとメディアができることについて議論できたら嬉しいです。

──ぜひ別枠でその議論もしたいですね。今年もその“もやもや”をぶつける先としてCREATIVE HACK AWARDにぜひ応募してください。

山田 はい。いま、新しいことを考えています。

──とても楽しみです。永井さんもCREATIVE HACK AWARDへ応募している先輩として、モノをつくるクリエーターの役割についてどう考えていますか?

永井 働き出してからやはりアカデミックな視点で考える時間が減ってしまい、問いを立てて何かを実行する際の問いの立て方が変わってきてしまったと感じています。お客様のためにまずビジネスとしてどう着地させるかをまず考えてしまうので、個人として、世の中に対してどのような問いを立ててつくるかを意識する大切さを最近強く感じています。自分の脳の外にあるアイデアを意図的に見るようにしていて、若い人たちや、新しく入社してきた人たちのアイデアを大事にしたいですし、書籍やラジオ、最近は時間の洗礼を経て生き残った古典と呼ばれる本を読むことも心がけています。

──印象に残っている本はありますか?

最近だと『ブラック・スワン』です。古典から学ぶことが多くて、SFも古典の知識があって眺めると視点が変わります。いまを生きていますが、過去と未来への遠投の両方をインプットすると、捉え方や解釈が広がる。そこから新しい問いを立てることが未来への突破口になると感じていますし、それを個人で発表するのか、ビジネスを通してやるのかはそれぞれ異なるので、チャンネルを使い分けて取り組んでいきたいと思っています。

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──柴田さんは長くコンサルティングを務めていらっしゃいますが、そうした大きな社会のコンテクストをどのように受け止めて仕事やプロジェクトに生かされていますか?

柴田 我々はアウトプットすることがお客様への貢献になるのですが、アウトプットはインプットがないとできないですし、インプットの量をいかに増やすかは重要です。ただ入社して長年やっていると、問いが会社やお客様から与えらるため、そのなかで考え、クリエイティブするうちにだんだんと閉ざされてしまいやすい。その枠を外して俯瞰することを意識的にしないといけないのですが、若いメンバーがそれを大事にしているのは嬉しいですね。

──ぼくも柴田さんの年齢に近いので、同じ思いです。ところで韓さんはSZの気になった記事のなかで、書籍についてのものを挙げていただいていましたよね。

 紹介されている書籍は毎回トリガーのスイッチを押してくれます。例えば日本では孤独死がネガティブに捉えられていますが、孤独死とは1人の自宅死であって選択のひとつであるという話を聞き、「1」という数字にいいも悪いもないのだと気にかけた始めたところに、『WIRED』でそんな本が紹介されていました。数字は絶対値ですが、各自それぞれが意味をもたせている相対的な概念かもしれないという裏を返した視点で面白かったです。

書籍だけでなく、『WIRED』はそんな観点や気づきを絶妙なタイミングで与えてくれます。直近では生成AIが人間を攻撃したというニュースが米国や韓国で多く、気になっていたところにシンギュラリティと人工知能(AI)のイベントをされていて、さすが早いなと。

──シンギュラリティについて米国ではかなり批判的な側面がありますが、いいとか悪いと決めつけるのではなくて、あえて真正面から議論するのが大切かなと思っています。先週はプルーラリティ(多元性)についてもイベントを行なったのですが、シンギュラリティとプルーラリティ、その両方できるメディアはなかなかないと思っています。

 気になったことで議論する相手がいないときに、ちょうどそんなインプットや考える軸をいただくのでわたしとしては嬉しいです。

山田 わかります。“もやもや”があったら、まずコンテンツを探しに『WIRED』にアクセスする。気づいたら2、3時間読んでいます(笑)。

──みなさんはどのような接点から『WIRED』SZにたどり着くんでしょうか?

久保木 わたしの場合はアカデミア時代の先生方で、キーパーソンからたどり着くことが多いですね。その人たちが意外につながっていたりします。

──いくつか記事を読み込んでいくと、見取り図というか、地図が自分のなかでどんどん出来ていくような感じですね。

久保木 学生時代は先生たちが語っていたビジョンが妄想のように感じられていたんですが、それも地続きでつながっている話なんだと気づきました。

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山田 ぼくもちょうど大学の教授から脱成長やブルシット・ジョブの話を聞いて、調べて最初にヒットしたのが『WIRED』で紹介されていた斎藤さんの本でした。ただ、教授やアカデミアの人たちの話もそうですし、一つのメディアだけを読んでいると、殻を出ようとしたら別の殻の中に入っていただけということもあるので、ただの殻の移動にならないように意識はしています。でも、やはり『WIRED』が面白すぎて引き寄せられて(笑)。

──7月末のSZメンバーシップではアンチ脱成長を謳った『Growth』という本を紹介しています。「脱成長」という考えもまさに“もやもや”で、行き過ぎた成長もよくないけれど、まったく成長しないのも人を不幸にする。つまり「ネガティブ・ケイパビリティ」が必要で、いずれにせよネガティブな側面が必ず出てくるときに、それを受け止めるだけの覚悟が本当にあるのか、ということだと思うんです。言っていて気持ちがよくなるような“正論”はだいたいがこの「ネガティブ・ケイパビリティ」を忌避して現実を単純化している。本当は“もやもや”を受け止めながらでないと前に進まないという議論が『Growth』にあって、そういう意味ではSZメンバーシップの限定記事のキュレーションでもバランスが取れるようにしています。

永井 ぼくはフィルターバブル的にワードを絞って、みんなはどんな風に見ているのか、マジョリティの視点を勝手に想定して探してみたりします。ただ、自分に必要な情報を意図して探しに行くと『WIRED』にたどり着くことが結果多い。そのたどり着いた先に問いのかけ合いみたいなものが落ちているので、そこからインスピレーションを得ているケースが多くあります。『WIRED』の英語版もたまに見ていますし、視点をフィルターバブルモードとそうじゃない視点、自我があるモードと、自我を殺したオートみたいな感じで見るようにしています。

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──SNSも使っていますか?

永井 FacebookもあればTikTokへ行くこともあります。意識的にチャネルを選んで、ここから行ったらどうなるかを実験的に見ています。遊び感覚ですね。

──すごくリテラシーが高いですね。柴田さんや韓さんはどのように情報を取っていますか?

 わたしは散歩します。街なかでも大手町の本屋と六本木のTSUTAYAでは全然違う目線で本が置かれますし、出先の大きい本屋さんをいつも散歩しています。『WIRED』もサイト内で散歩します。サイトへアクセスして、わざとセッションで選んでみる。そうするとわたしはいまどこを散歩しているか認識できるし、情報の流れも見えます。朝起きてすぐにコーヒー片手に携帯で『WIRED』内を散歩する。15分の朝活です。さらに情報のインプットはLinkedInが多くて、『WIRED』で紹介されてる方もフォローしてみたり、その人がどんなリポストしてるかも見ます。わたしは情報を集めるためにSlackも使っていて、興味あるサイトでRSSフィードが使えるものを全部集めて、テーマごとに各サイトが更新されたら全部上がってくるようにしています。

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柴田 ぼくはやはり人を通してであることが多いですね。社内のコミュニティや、自分のネットワーク上の専門家と会って話して、相手が興味をもっていることが自分の知らない世界だったり、新しい分野だったりするのでそれを入り口に深掘りしていきます。

──“人”も最強のソースですよね。みなさんさすがにリテラシーが高いですね! 最後に、『WIRED』のSZメンバーシップについて、ここは改善したほうがいいというポイントや、変わってほしくないということがありましたら聞かせてください。

山田 組織のなかでサービスを享受できるので、ユーザーが交流できるような仕掛けやエクスペリエンスを提供する機能があると、より社内の活性化につながるんじゃないかと思います。

永井 『WIRED』はアイデアの宝庫で、社会実装できそうなアイデアがたくさんあります。そうしたアイデアの種をシードバンクのようにストックしておくことで、アカデミックからビジネス、実際に決済権のある行政レイヤーにもつながって、社会実装までのハブとして機能するのではないでしょうか。

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──我々も実装するメディアを掲げているので、まさにその方向性を目指したいところです。韓さんはいかがですか?

 『WIRED』はいまどき貴重なメディアですし、若者にも読んでほしいと思うのですが、最近の若者は3秒くらいのコンテンツで満足して消費していく世代なので、もっと隅々まで、ふと見たらこんなこと言ってくれるのは『WIRED』だよね、くらいのライトな体験をセットアップすると、より読者層が広がると思います。一度出合ったら絶対離脱しないので。それくらいコンテンツの品質が担保されていると思っています。

最近、何年経っても読んで価値ある本ってなかなかないですよね。ニューヨークタイムズをはじめ、みんなが紙媒体を捨てるなかで、『WIRED』は両方のバランスを保っていて、その意味でも価値があるのでずっと続けてほしいと思っています。

──ありがとうございます。心強いです。久保木さんはいかがですか?

久保木 わたしは仕事で目を酷使するので、耳から入ってくるポッドキャストをよく聞いていて、特に通勤中は集中して聞けるんですが、聞き直したいときや、振り返りをしたいときに検索や戻りづらさを感じているので改善していただけると嬉しいです。

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──ポッドキャストはもっと充実させていきたいですね。よく議論になるのが番組の最適な長さなんですが、久保木さんはどれくらいだと思いますか?

久保木 わたしは20分。乗り換えの時間とかを考えると。

──やはりそれくらいですね。ぼくがつい長く話し過ぎてしまって(笑)。最後に柴田さんもぜひお願いします。

柴田 わたしはやはり人に興味があるので、読書遍歴みたいに、ほかの読者がどのように情報や知識を蓄積していったかが分かる仕組みがあると面白いなと。本棚にはその人の人生や考え方が現れますが、どの順番で買ったかまではわからない。デジタルだったらその人がどのように情報を広げて、深めていったかも残るので、そんな仕組みがあればと常々思っています。

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──みなさんご専門なので、すごくいいヒントをいただきました。本日はありがとうございました!

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