房総半島
房総半島(ぼうそうはんとう)は、関東地方の南東に突出する半島で、千葉県の大部分を占め、半島名は令制国の安房国、上総国と下総国に由来する[2][注 1][注 2]。東京湾(浦賀水道)と太平洋に囲まれており、古代から中世までは、現在の利根川流域に香取海と呼ばれた内海があり、四方を海や大河に囲まれ島に近い状態であった[3]。
房総半島 | |
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房総半島のSentinel-2衛星写真 | |
座標 | 北緯35度27分 東経140度12分 / 北緯35.45度 東経140.20度 |
面積 | 5156.74[1] km2 |
海岸線長 | 531.015km[1] km |
最高標高 | 408.2 m |
最高峰 | 愛宕山 (南房総市) |
最大都市 | 千葉県千葉市 |
所在海域 | 太平洋、東京湾 |
所属大陸・島 | 日本列島・本州 |
所属国・地域 | 日本 |
水にかこまれた半島
編集日本列島の中央部、本州が東北から西南に弓なりに曲がるところに大きな半島がある。これが房総半島であり、その全域が千葉県に当たる。古代から中世には、霞ヶ浦、北浦、印旛沼、手賀沼などの湖沼を中心に香取海(古鬼怒湾)と呼ばれた一続きの入海が存在し、北西の東京湾(古東京湾)が現在より内陸に入り込んでおり、赤堀川・逆川が開削される微高地で本州に繋がってはいたが、四方を海や河川のような水域に囲まれた島のような環境にあった[4]。近世の初め、江戸幕府によって行われた利根川東遷事業によって河川の堆積機能が大きくなったこともあり、徐々に埋め立てられて陸化が進んだものである[3][5]。
東端と南端
編集最東端は利根川河口近くの犬吠埼(銚子市)で、北海道の宗谷岬、九州の佐多岬からともに約1,100キロメートルの等距離にあり、日本列島の中心にあたる[6]。最南端は野島崎(南房総市)である[7]。元禄地震で付近が隆起し、それまで島であった野島が陸続きとなり野島崎となった、野島崎灯台からさらに南の岩礁が最南端である。東京湾側は内房(うちぼう)、太平洋側は外房(そとぼう)と呼ばれ、洲埼がその境とされる。最高標高は408.2m(愛宕山)である。
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犬吠埼灯台
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野島崎灯台
地形
編集地形的には南から北へ3段階に低くなり、低山性の丘陵、台地、平野部に区分される。南部から中部にかけては標高300メートル前後の房総丘陵などからなる丘陵地・台地であり、平野部は利根川の沖積平野、九十九里平野、東京湾岸の三角州平野などである。南部の海岸には海岸段丘、海食崖が発達し、出入りに富んだ海岸線が多く、太平洋岸の太東岬(いすみ市)から東京湾岸の富津岬(富津市)にいたる約190キロメートルの海岸地帯及び房総丘陵の山岳群(鹿野山、清澄山、鋸山など)は、1958年(昭和33年)南房総国定公園に指定された。南端部では無霜地帯があり花卉栽培が盛んである。房総丘陵以北は首都圏の一部に属し、そのなかに点在する近郊農業地域は九十九里平野にまで及んでいる。 東京湾岸には京葉工業地帯の造成が進み、住宅や工場の進出が著しく、急速に都市化・工業化が進行している[8]。
自然条件と開発
編集千葉県域は房総半島であり、その自然条件や景観が特徴となっている。北部には下総台地が広がり、半島の東側は九十九里浜が続き海岸平野が連なっている。南部の房総丘陵は清澄山系の山嶺によって上総丘陵と安房丘陵に分けられる[9]。
九十九里の浜平野である九十九里平野は北東から約60キロメートルに及んでいる。銚子市方面の屏風ヶ浦や、半島南部の洲崎から野島崎などを経て太東岬に至る外房(太平洋側)の海岸、また富津市湊川河口から大房岬に至る内房(東京湾側)の海岸は、砂浜のみならず岩礁や海食崖などが形成され美しい景観を呈している。他方、富津岬から北の東京湾北東部の海岸は、1940年(昭和15年)から始まった埋立による人工海岸が続き、京葉工業地帯をなしている[9]。
このように房総半島東部と中部以南は豊かな自然が残り、観光地にもなっている。一方で、東京大都市圏に含まれ、東京都区部から都市部が連続している北西部に対して、経済・人口格差が開いているという「南北問題」も指摘されている[10][注 3]。
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鵜原海岸
気候
編集黒潮は、房総半島の沖合いで東に流れを変え、北東からの親潮と潮目をつくっている。内陸部(房総丘陵)は関東平野中央部の内陸性気候を呈するが、全体としては黒潮の影響で温暖な海洋性気候を示している。南端部では無霜地帯があり、降水量の多さも含めて南部の海洋性気候は内陸部とは明らかな違いがある[9]。房総半島は一般に温暖な気候のところとして知られる。高い山地はないが[注 4]、海岸の気候、岬の気候、河岸の気候など様々な気候が見られるところでもある[4]。年間平均気温16度以上で、冬でもめったに雪が降らない温暖な地域である房総半島南部の館山市・勝浦市では、真夏日日数も少ない避暑地でもある。そのため夏は避暑地に、冬には避寒地として多くの観光客が訪れる。
館山(1981 - 2010年)の気候 | |||||||||||||
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月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 年 |
平均最高気温 °C (°F) | 11.2 (52.2) |
11.4 (52.5) |
14.1 (57.4) |
18.8 (65.8) |
22.3 (72.1) |
24.9 (76.8) |
28.5 (83.3) |
30.5 (86.9) |
27.4 (81.3) |
22.6 (72.7) |
18.2 (64.8) |
13.8 (56.8) |
20.31 (68.55) |
日平均気温 °C (°F) | 6.3 (43.3) |
6.6 (43.9) |
9.5 (49.1) |
14.2 (57.6) |
18.1 (64.6) |
21.2 (70.2) |
24.8 (76.6) |
26.4 (79.5) |
23.3 (73.9) |
18.1 (64.6) |
13.3 (55.9) |
8.7 (47.7) |
15.88 (60.58) |
平均最低気温 °C (°F) | 1.0 (33.8) |
1.4 (34.5) |
4.5 (40.1) |
9.3 (48.7) |
14.1 (57.4) |
18.0 (64.4) |
21.9 (71.4) |
23.2 (73.8) |
19.9 (67.8) |
13.9 (57) |
8.4 (47.1) |
3.4 (38.1) |
11.58 (52.84) |
降水量 mm (inch) | 81.8 (3.22) |
82.4 (3.244) |
166.2 (6.543) |
150.2 (5.913) |
149.8 (5.898) |
215.2 (8.472) |
173.6 (6.835) |
126.0 (4.961) |
219.5 (8.642) |
219.9 (8.657) |
130.0 (5.118) |
75.4 (2.969) |
1,790 (70.472) |
平均月間日照時間 | 170.4 | 152.5 | 153.8 | 175.3 | 173.3 | 133.6 | 170.8 | 215.3 | 143.6 | 137.7 | 145.1 | 166.1 | 1,937.5 |
出典:気象庁[11] |
交通
編集交通網が発達しており、房総半島北部では、東京都区部とを結ぶ総武本線や成田線あるいは京成電鉄の各線など多数の鉄道・路線バスが運行されている。南部の主要交通はバスとなっており、地域内の路線バスの他、東京湾アクアラインや館山自動車道を経由して、東京都心と房総半島南部の各地を結ぶ高速バスが運行されており重要な交通機関になっている。以下は観光地である房総半島南部へ向かう公共交通機関を中心に、鉄道はJR東日本「蘇我駅」(京葉線の終点で外房線と内房線の分岐点)以南、高速・有料道路はNEXCO東日本「千葉東JCT」(鉄道と類似位置を通る高速・有料道路の分岐点)以南を列挙する。
鉄道
編集- 乗換駅
- 東日本旅客鉄道(JR東日本)
- 小湊鉄道
- ■ 小湊鉄道線
- 五井駅 - 上総中野駅
- ■ 小湊鉄道線
- いすみ鉄道
- ■ いすみ線
- 大原駅 - 上総中野駅
- ■ いすみ線
- 鋸山ロープウェー
- 鋸山山麓駅 - 鋸山山頂駅
- 京葉臨海鉄道
- 本線(貨物専用路線)
高速道路・有料道路
編集国道
編集- 国道16号(横浜市 - 富津市)
- 国道127号(館山市 - 木更津市)
- 国道128号(館山市 - 東金市)
- 国道297号(館山市 - 市原市)
- 国道409号(川崎市 - 成田市)
- 国道410号(館山市 - 木更津市)
- 国道465号(茂原市 - 富津市)
路線バス
編集港湾
編集船舶
編集脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b 千葉県勢要覧 令和4年版
- ^ 『世界大百科事典』26-153頁
- ^ a b 『千葉県の歴史』6頁
- ^ a b 『角川日本地名大辞典(千葉県)』19頁
- ^ 昔、千葉県は島だった!? 海岸線の変化と香取海【千葉地理学会連載 おもしろ半島ちばの地理再発見】『千葉日報』(2017年1月17日)2021年9月3日閲覧。
- ^ 『図説 千葉県の歴史』32頁
- ^ 水に囲まれた地を象徴 千葉県の東西南北端は【千葉地理学会連載 おもしろ半島ちばの地理再発見】『千葉日報』(2018年8月22日)2019年2月13日閲覧。
- ^ 『ブリタニカ国際大百科事典』5-1041頁
- ^ a b c 『千葉県の地名(日本歴史地名大系 12)』27頁
- ^ 『千葉県の将来⼈⼝と変化を踏まえた今後の地⽅創⽣のあり⽅〜⼈⼝変動を⾒据えたブロック毎のあるべき地⽅創⽣の姿〜』千葉銀行(2017年9月)2019年2月13日閲覧。
- ^ “館山 平年値(年・月ごとの値) 主な要素”. 気象庁. 2016年4月12日閲覧。
参考文献
編集- 角川日本地名大辞典編纂委員会『角川日本地名大辞典(千葉県)』 角川書店、1984年、ISBN 4-04-001120-1
- 石井進 他『千葉県の歴史』 山川出版社、2000年、ISBN 4-634-32120-3
- 小笠原長和・監 『千葉県の地名(日本歴史地名大系 12)』 平凡社、1996年、ISBN 4-582-49012-3
- 『世界大百科事典〈26〉』平凡社、2007年、
- 『ブリタニカ国際大百科事典〈5〉』(小項目事典) TBSブリタニカ、1974年
- 『図説 千葉県の歴史』河出書房新社、1989年、ISBN 4-309-61113-3