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オーストラリア (競走馬)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
オーストラリア
イギリスダービー時のオーストラリア
欧字表記 Australia
品種 サラブレッド
性別
毛色 栗毛
生誕 2011年4月8日(13歳)
死没 (存命)
ガリレオ
ウィジャボード
母の父 ケープクロス
生国 イギリスの旗 イギリス
生産者 Stanley Estate And Stud Co
馬主 Derrick Smith, Susan Magnier,
Michael Tabor & Teo Ah Khing
調教師 A P O'Brien (アイルランド)
競走成績
生涯成績 8戦5勝
獲得賞金 (アイルランド) 778,445ユーロ
(英国) 831,018 ポンド
勝ち鞍
G1 英ダービー 2014年
G1 愛ダービー 2014年
G1 インターナショナルS 2014年
G3 ブリーダーズCJTトライアルS 2013年
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オーストラリア (Australia2011年4月8日 -[1]) は、イギリス産のサラブレッド競走馬で、2014年イギリスダービー馬である。2歳時 (2013年) にブリーダーズカップジュベナイルターフトライアルステークスでの「素晴らしい」勝利など2勝をあげ、管理調教師のエイダン・オブライエンからも高い評価を受けることになった。イギリスダービー優勝に先立って、5月の2000ギニーではナイトオブサンダーキングマンに次ぐ3着になっている。

背景

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オーストラリアは栗毛の牡馬で、額には細い流星がある。生産者はニューマーケット (en:Newmarket,_Suffolk) に本拠を置くスタンリーハウススタッド (Stanley House stud) である[2]

オーストラリアの父ガリレオはイギリスダービー優勝馬で、種牡馬として大成功し、5度のチャンピオンサイアーになっている[3]。ガリレオの産駒には既にイギリスダービー優勝馬が2頭おり、それは2007年優勝馬のニューアプローチと2013年優勝馬のルーラーオブザワールド (en:Ruler of the World)である[4]

オーストラリアの母ウィジャボードはG1を7勝している。その中には2004年のオークスも含まれており、カルティエ賞全欧年度代表馬に2回選出されている。オーストラリアはウィジャボードの4番仔で、ガリレオを父にもつものとしては2番目の仔である。

オーストラリアの全姉フィリアレジナ (Filia Regina[5]) はヤーマス競馬場 (en:Great Yarmouth Racecourse) でハンデ競走を1勝しただけの低い成績におわった。また、半兄のアワヴードゥープリンス (Our Voodoo Prince[注 1][6]) はイギリスで3勝したあと売却され、いまはオーストラリアのクリス・ウォーラー調教師 (Chris Waller) のもとにいる[注 2]

オーストラリアは、2012年10月にタタソールズの1歳馬のセリに出され、ブラッドストック社のエージェントであるダーモット“デミ”オバイアン (Dermot "Demi" O'Byrne) が、ジョン・マグナー (クールモアグループ代表) の代理人として525,000ギニーで落札した[7][8]

競走馬としては、オーストラリアの所有権は共有名義で走ることになる。共有者は、スーザン・マグナー (Susan Magnier) 、デリック・スミス (Derrick Smith) 、マイケル・テイバーと、マレーシアの建築家 (architect) ・事業家で、デザート・スターホールディング (Desert Star Holdings) 会長の張祖徳 (Teo Ah Khing、テオ・アー・キン) である[9][注 3]

騎手のジョセフ・オブライエンはオーストラリアの全ての出走競走に騎乗し、服色はデリック・スミスの紫の絹の勝負服をずっと着用している。

共同オーナーのスーザン・マグナーは、クールモアグループの代表ジョン・マグナーの妻で、クールモアグループは競走馬の命名をスーザン・マグナーに任せている。ジョン・マグナーによれば、彼らはオーストラリア (国) にもっているスタッド (種牡馬牧場) にいつか名馬を繋養したいと望んでおり、それゆえにこの競走馬に「オーストラリア」と名付けたのだろうと語っている[10]

競走成績

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2歳時(2013年)

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オーストラリアの初戦は、6月30日のカラ競馬場の7ハロン(約1408メートル)メイドン戦(0勝馬による競走[注 4])だった。オーストラリアは本命だったが、スタートで後手を踏み、ゴール前ですごーーく(stroongly)追い上げたが、ジム・ボルジャー厩舎のルネサンスアート(Renaissance Art)にクビ差及ばず2着に終わった[11]

7月20日に同じコース (カラ競馬場7ハロン) のメイドン戦に出走。11頭中1番人気、単勝1.3倍という圧倒的人気を裏切ることなく勝利を収めた [12][注 5]

オーストラリアの3戦目は、9月7日のレパーズタウン競馬場のブリーダーズカップジュヴェナイルターフトライアルステークス (G3、1マイル=約1609メートル) だった。この時は4頭中2番人気だった。1番人気はダーモット・ウェルド厩舎のフリーイーグル (Free Eagle) で、フリーイーグルはデビュー戦を5馬身半差で勝ってきた馬だった。オーストラリアは、キングフィッシャー (Kingfisher) とフリーイーグルに次ぐ3番手を進み、残り1ハロン(約201メートル)あたりで先頭に立った。ゴール前で加速すると後続に6馬身の差をつけ、「素晴らしい」勝利をおさめた[13]

3歳時(2014年)

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2014年、オーストラリアは春のクラシック前哨戦に出ることなく、イギリス三冠初戦の2000ギニーにぶっつけ (前哨戦に出走せず、直接本戦に臨むこと) で出走した。5月3日にニューマーケット競馬場のロウリーマイルコース (直線走路) で行われた2000ギニーでは、3.5倍の2番人気になった。スタートすると、馬群は幅の広いロウリーマイルコースを左右2つのグループに分かれて進んだが、オーストラリアはそのうちスタンド側 (騎手の目線からは左手側) の集団にいた。オーストラリアはレースの終盤にこの集団の先頭に出たが、反対側を進んだ集団にいたナイトオブサンダーとキングマンが1、2着となり、オーストラリアは3着だった[14]

2000ギニーのあと、オブライエンは結果に満足していると述べ、イギリスダービーの早売り馬券の倍率は3.25倍から2.75倍へ下がった。オーストラリアは伝統的なダービーの前哨戦には一切出なかったが、有力馬と目されていたゴドルフィングループのトゥルーストーリー(True Story)がダンテステークスで凡走したため、オーストラリアの馬券の倍率はますます下がった[15]。大手ブックメーカーのコーラル社 (en:Gala Coral Group) はオーストラリアに1.66倍のオッズをつけた。

バリードイルで調教を受けた僚馬のうち、オーケストラ (Orchestra) はチェスターヴェースに勝ったが、この競走は前年の勝馬ルーラーオブザワールドがその後ダービーに優勝していたので、オーケストラの前売り馬券の倍率が下がった。キングフィッシャーはディーステークスに勝ち、この年からG3に格下げされたアイルランドダービートライアルではジェフリーチョーサー (Geoffrey Chaucer) が3着になった[16]。これを受けてブックメーカーは、ダービーの2週間前の時点で、ジェフリーチョーサーの倍率を大きく変え、オーストラリアの倍率を少し上げた[17]。降雨の心配から、ダービー直前には道悪巧者のキングストンヒルの倍率が下がり、オーストラリアの倍率はまた少し上がった[18]。前哨戦に全く出なかったのはオーストラリアだけだった。

6月7日のダービーでは、出走馬16頭中、オーストラリアは最終倍率2.375倍の本命、対抗のキングストンヒルが8.5倍、ゴドルフィングループのトゥルーストーリが9倍となった。オーストラリアは輪乗りでも落ち着いていて、最後にゲート入りした。

人気薄で51倍のアワチャンネル (Our Channel) が飛び出してハイペースを作り出し、キングフィッシャー、キングストンヒルが続き、ジョセフ・オブライエン騎手のオーストラリアはその後方に控えた。最終コーナーの手前からオーストラリアが外から進出をはじめ、直線を向くと、キングストンヒルが先頭に立ち、直線の早い段階でオーストラリアがこの先頭争いに加わった。オーストラリアは残り1ハロン近くでキングストンヒルとの競り合いを制して先頭に出ると、最後は1馬身1/4に差を広げてゴールした[19]

レース後にエイダン・オブライエン調教師はこう語っている。

「いいかい、ずっと前から我々はオーストラリアがすごく特別だとわかっていたんだ。我々はオーストラリアをここへ連れてくるだけでよかった。だがみんな信じてくれなかった。いろいろあったからね。いいかい、things can go wrong so big credit to everyone at home」[20]

ジョセフ・オブライエン騎手のコメント

「オーストラリアほど乗りやすい馬は初めてだ。最高だよ。」[20]

イギリスダービーの3週間後、オーストラリアはカラ競馬場のアイルランドダービーに出走した。キングストンヒルが堅すぎる馬場を嫌って出走を取り消したので、オーストラリアにライバルと呼べそうな馬はおらず、単勝倍率は1.125倍だった。「普段の運動みたいなもの」[21]というほどの楽なレースでオーストラリアは2馬身半差で優勝した。2着にキングフィッシャー、さらに2馬身半差の3着にはオーケストラが入った[22]。 初めての古馬との対戦となったインターナショナルステークスも制しG1・3連勝を飾った。続くアイリッシュチャンピオンステークスではザグレーギャツビーの2着に敗れた。

その後チャンピオンステークスに出走予定だったが、右後肢の蹄に故障を発生し引退。アイルランドクールモアスタッド種牡馬入りする[23]

戦歴

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競走日 競馬場 競走名 距離(馬場)


オッズ
(人気)
着順 タイム
(上り3F)
着差 騎手 斤量 1着馬(2着馬)
2013.06.30 カラ 未勝利 芝7furlong(GF) 9 3 (1人) 2着 J.O'Brien 131lb Renaissance Art
0000.07.20 カラ 未勝利 芝7furlong(GF) 11 9 (1人) 1着 1:25.79 J.O'Brien 131lb (Carla Bianca)
0000.09.07 レパーズタウン BCジュベナイル
ターフトライアルS
G3 芝1mile(G) 4 3 (2人) 1着 1:40.30 J.O'Brien 129lb (Free Eagle)
2014.05.03 ニューマーケット 英2000ギニー G1 芝1mile(GF) 14 10 (2人) 3着 J.O'Brien 126lb Night Of Thunder
0000.06.07 エプソム 英ダービー G1 芝12f10y(G) 16 12 (1人) 1着 2:33.63 J.O'Brien 126lb Kingston Hill
0000.06.28 カラ 愛ダービー G1 芝12f(GF) 5 5 (1人) 1着 2:33:19 J.O'Brien 126lb (Kingfisher)
0000.08.20 ヨーク 英国際S G1 芝10f88y(GF) 6 6 (1人) 1着 2:07:35 J.O'Brien 123lb The Grey Gatsby
0000.09.13 レパーズタウン 愛チャンピオンS G1 芝10f(GF) 7 2 (1人) 2着 J.O'Brien 126lb The Grey Gatsby

馬場のGFはGood to Firmの略、GはGoodの略

種牡馬成績

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主な産駒

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血統表

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オーストラリア血統サドラーズウェルズ系)、Northern Dancer 3×5=15.625% (血統表の出典)

Galileo
1998 鹿毛
父の父
Sadler's Wells
1981 鹿毛
Northern Dancer Nearctic
Natalma
Fairy Bridge Bold Reason
Special
父の母
Urban Sea
1989 栗毛
Miswaki Mr.Prospector
Hopespringseternal
Allegretta Lombard
Anatevka

Ouija Board
2001 鹿毛
Cape Cross
1994 黒鹿毛
Green Desert Danzig
Foreign Courier
Park Appeal Ahonoora
Balidaress
母の母
Selection Board
1982 鹿毛
Welsh Pageant Tudor Melody
Picture Light
Ouija Silly Season
Samanda F-No.12-b


脚注

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  1. ^ キングマンボ
  2. ^ アワヴードゥープリンスは2014年のイースターカップAUSG3の勝馬。(出典はRacingPost 2014 Le Pine Funerals Easter Cup2014年7月28日閲覧)
  3. ^ 張に関する出典はJAIRS 2014年06月20日付 中国本土に競馬を根付かせる試み(中国)【開催・運営】およびChina Horse Club 2004年新年のご挨拶いずれも2014年7月28日閲覧
  4. ^ ふつう、maiden raceは「未勝利戦」と訳すことが多いが、日本での「未勝利戦」は「出走経験のある馬」によって行われるが、maiden raceは0勝馬によって争われるため、誤解を避けるためここでは「未勝利戦」とは訳さない。
  5. ^ 出典にあるオッズの「30/100」の解釈について。ふつう「10/1」と表記した場合、これは「1ポンドの賭金で10ポンドの儲け」を意味する。日本風の表現では(元金の1ポンドも払い戻しに含めるので)11倍となる。したがって「30/100」は1.3倍となる。「3/10」ではなく「30/100」であるのは、最小賭金に制約を設けているからかもしれない。(出典からはそこまではよくわからない)

出典

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  1. ^ Equineline Australia(GB)2014年7月28日閲覧
  2. ^ Thoroughbred Bloodlines - Diana - Family 12-b2014年7月28日閲覧
  3. ^ サラブレッドヘリテイジ イギリス歴代チャンピオンサイアー2014年7月28日閲覧
  4. ^ RacingPost Galileoの種牡馬成績2014年7月28日閲覧
  5. ^ RacingPost Filia Regina2014年7月28日閲覧
  6. ^ RacingPost Our Voodoo Prince2014年7月28日閲覧
  7. ^ Tattersalls October Yearlings Sale (Book 1)2014年7月28日閲覧
  8. ^ 英ダービー候補の良血、オーストラリア」スポーツニッポン 2013年9月12日
  9. ^ Teo Ah Khing2014年7月28日閲覧
  10. ^ ThoroughbredNEWS 2014年6月8日 Australia becomes a first winner with China link2014年7月28日閲覧
  11. ^ RacingPost BARRONSTOWN STUD EUROPEAN BREEDERS FUND (C & G) MAIDEN2014年7月28日閲覧
  12. ^ RacingPost DARLEY EUROPEAN BREEDERS FUND MAIDEN2014年7月28日閲覧
  13. ^ RacingPost ICON BREEDERS' CUP JUVENILE TURF TRIAL STAKES2014年7月28日閲覧
  14. ^ RacingPost QIPCO 2000 GUINEAS STAKES2014年7月28日閲覧
  15. ^ the guardian 2014年5月15日付 Australia odds-on for the Derby after True Story flops in Dante Stakes2014年7月28日閲覧
  16. ^ RacingPost 2014年6月4日 Moore on Chaucer as O'Brien confirms plans2014年7月28日閲覧
  17. ^ RacingPost 2014年5月22日付 Australia eased as money comes for Chaucer2014年7月28日閲覧
  18. ^ RacingPost 2014年6月4日 Met Office forecast heavy rain for Derby day2014年7月28日閲覧
  19. ^ RacingPost INVESTEC DERBY2014年7月28日閲覧
  20. ^ a b BBC Epsom Derby: Australia wins to make history for Aidan O'Brien2014年7月28日閲覧
  21. ^ RacingPost 2014年6月28日付 Australia wins Irish Derby at a stroll2014年7月28日閲覧
  22. ^ オーストラリア英愛制覇/愛ダービー」日刊スポーツ 2014年6月29日
  23. ^ 英愛ダービー馬のオーストラリアが引退 種牡馬入りへ - 競馬ラボ、2014年10月12日閲覧

外部リンク

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