平野区市営住宅殺人事件
このページ名「平野区市営住宅殺人事件」は暫定的なものです。(2012年12月) |
平野区市営住宅殺人事件 | |
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場所 | 日本・大阪府大阪市平野区 |
標的 | 男の姉(当時46歳)[1] |
日付 | 2011年(平成23年)7月25日 (UTC+9) |
概要 | 男が自宅を訪れた姉に対し、腹や腕などを包丁で刺して殺害した[1]。 |
攻撃手段 | 刺殺 |
攻撃側人数 | 1人 |
武器 | 包丁 |
死亡者 | 1人 |
犯人 | 男(当時41歳) |
容疑 | 殺人 |
動機 | 自立を促した姉に対する報復[1] |
対処 | 男を平野警察署が逮捕・大阪地方検察庁が起訴[2] |
刑事訴訟 | 懲役14年(控訴審判決・最高裁の上告棄却決定により確定[1][3]) |
管轄 |
平野区市営住宅殺人事件(ひらのくしえいじゅうたくさつじんじけん)とは2011年(平成23年)7月に大阪府大阪市平野区で発生した殺人事件。一審判決では精神鑑定でアスペルガー症候群と診断された男に対する判決が波紋を呼んだ(後述)[4]。
経緯
2011年(平成23年)7月25日、引きこもり状態の男(当時41歳)が自宅に生活用品を届けに来た姉(当時46歳)を刺殺し、殺人容疑で逮捕された[5]。
男は小学校高学年の頃から不登校になり、以後約30年間引きこもるようになった[5]。転校することなどを聞き入れなかったのを全て姉のせいだと逆恨みして事件を起こした[5]。
大阪地検は男に精神鑑定を実施した結果、アスペルガー症候群と診断された[2]。しかし、刑事責任能力に問題はないと判断して男を殺人罪で起訴した[2]。
刑事裁判
第一審・大阪地裁
弁護側は精神鑑定で男にアスペルガー症候群があり心神耗弱状態だったとして保護観察付きの執行猶予を求めていた[5]。一方で検察側は懲役16年を求刑した[5]。
2012年(平成24年)7月30日、大阪地裁(河原俊也裁判長)は「家族が同居を望んでいないため社会の受け皿がなく、再犯の可能性が心配される。許される限り刑務所に収容することが社会秩序の維持にも役立つ」として検察側の求刑を上回る懲役20年の判決を言い渡した[5][6][2]。弁護側は「保安的観点に傾いた判決。精神障害を認定しながら量刑が重い方向になっているのは容認しがたい」として控訴した[7]。
控訴審・大阪高裁
2013年(平成25年)1月29日、大阪高裁(松尾昭一裁判長)で控訴審初公判が開かれ、弁護側は「障害を重罰化の理由としたのは偏見による誤り」と述べて一審判決の破棄を主張、検察側は控訴棄却を求めて即日結審した[8][9]。
2013年(平成25年)2月26日、大阪高裁(松尾昭一裁判長)は「一審判決はアスペルガー症候群の影響を正当に評価していない」「十分に反省を示せないのは同症候群の影響。それなりの反省を深めつつあり、再犯可能性を推認させる状況でない」として一審判決を破棄し懲役14年の判決を言い渡した[10][11]。弁護側は判決を不服として上告した[12]。
上告審・最高裁第一小法廷
2013年(平成25年)7月22日、最高裁第一小法廷(山浦善樹裁判長)は弁護側の上告を棄却する決定を出したため、二審・大阪高裁の懲役14年の判決が確定した[13][14]。
判決への評価
一審で求刑より重い判決が出たことに対し、日本大学名誉教授・板倉宏は「障害がある場合、量刑が軽くなるケースが大半。法律の専門家からすれば違和感が残る」と指摘した[5]。
また、日本発達障害ネットワーク理事長・市川宏伸は「アスペルガー症候群の人は反省していないのではなく、言われることが分かっていないだけだ。裁判員の理解がないとこういう結果になりやすく、裁判員制度が始まるときに心配していたことが起こった」と裁判員裁判における懸念点を挙げながら批判した[4]。
脚注
- ^ a b c d 『読売新聞』2013年2月27日 全国版 大阪朝刊 2社38頁「「発達障害に厳罰」破棄 姉刺殺 懲役20年を14年に 大阪高裁」(読売新聞大阪本社)
- ^ a b c d 『読売新聞』2012年7月31日 全国版 大阪朝刊 2社36頁「姉刺殺 求刑超す判決 発達障害の一種 「社会に受け皿ない」大阪地裁」(読売新聞大阪本社)
- ^ 『読売新聞』2013年7月25日 全国版 大阪朝刊 2社34頁「姉刺殺懲役14年 被告の上告棄却」(読売新聞大阪本社)
- ^ a b 「発達障害で求刑超す判決 大阪地裁「社会秩序のため」」『中国新聞』2012年7月31日。オリジナルの2012年7月31日時点におけるアーカイブ。2025年1月7日閲覧。
- ^ a b c d e f g 「発達障害で求刑より重く 大阪地裁、姉殺害で懲役20年の判決」『日本経済新聞』2012年7月31日。オリジナルの2025年1月6日時点におけるアーカイブ。2025年1月7日閲覧。
- ^ 「姉殺害に求刑超え懲役20年判決 発達障害で「社会秩序のため」」『共同通信』2012年7月30日。オリジナルの2012年7月30日時点におけるアーカイブ。2013年8月3日閲覧。
- ^ 「アスペルガー症候群で求刑超え判決、被告側が控訴」『日本経済新聞』2012年8月13日。オリジナルの2025年1月6日時点におけるアーカイブ。2025年1月7日閲覧。
- ^ 『読売新聞』2013年1月30日 全国版 大阪朝刊 社会33頁「「重罰の理由が障害は偏見」姉刺殺控訴審で弁護側」(読売新聞大阪本社)
- ^ 『朝日新聞』2013年1月30日 朝刊 3社会35頁「「求刑上回る判決」控訴審結審 大阪・姉刺殺事件 【大阪】」(朝日新聞大阪本社)
- ^ 「2審は求刑下回る懲役14年 発達障害の殺人で大阪高裁」『日本経済新聞』2013年2月26日。オリジナルの2024年11月30日時点におけるアーカイブ。2025年1月7日閲覧。
- ^ 「発達障害の男に二審は求刑以下 姉殺害で懲役14年」『共同通信』2013年2月26日。オリジナルの2013年10月4日時点におけるアーカイブ。2013年8月3日閲覧。
- ^ 『毎日新聞』2013年3月13日 大阪朝刊 社会面30頁「大阪・姉殺害:発達障害の被告が上告」(毎日新聞大阪本社)
- ^ 「発達障害の被告、懲役14年確定へ 姉殺害容疑で最高裁上告棄却」『日本経済新聞』2013年7月24日。オリジナルの2025年1月6日時点におけるアーカイブ。2025年1月7日閲覧。
- ^ 「姉殺害、懲役14年確定へ 発達障害、一審は求刑超え」『共同通信』2013年7月24日。オリジナルの2014年8月3日時点におけるアーカイブ。2013年7月25日閲覧。
関連項目
外部リンク
- 姉刺殺の被告に求刑超す判決…大阪地裁 - 読売新聞、2012年7月31日
- 発達障害者に求刑超え異例判決 「社会秩序のため」に賛否分かれる - J-CASTニュース、2012年7月31日